森林法
第百九十七条 森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者は、森林窃盗とし、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第百九十八条 森林窃盗が保安林の区域内において犯したものであるときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法に窃盗罪の条文がありますが、それとは別に森林法で「森林窃盗罪」が定められているわけです
懲役刑が少し軽い。
刑法 第二百三十五条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
いずれにしても、日本では自分の所有する山林以外の場所でタラの芽を採ることは犯罪になります。
写真の警告文の通りです。
次はドイツの法律を紹介します。(出典「ドイツ林業と日本の森林」岸修司著 築地書館 2012年)
ドイツ連邦森林法
第14条 森林への立ち入り
(1)森への立ち入りは保養の目的のために承認される。(略)利用は自己の責任で行う。
(2)州は、詳細を規定する。(以下、略)
ラインラント・バルツ州森林法
第6章 森林利用者の権利と義務
第22条 立ち入り、乗馬、通行
(1)誰もが、保養の目的で森に立ち入ることが許される。
第23条 森林産品の占有
(1)キノコ、イチゴないし枝、花や雑草は手で持てる束程度の量まで、個人の必要に応じて摘むことが許される。その摘み取りの際には十分な配慮が大切である。
春にタラの芽を採ることが日本では犯罪であり、ドイツでは個人の権利として保障される。日本では所有者の権利が優先され、ドイツでは利用者の権利が制限はあるものの承認される。ドイツ森林法の目的のひとつに一般市民と森林所有者の利害を調整することにあると明記されてます。日本の森林法には市民や利用者という言葉はありません。森林に対する文化・民度の違いを見せつけられる感じがします。
スウェーデンでは憲法で自然享受権というものが保障されています。北欧では慣習法としての自然享受権があり、のちに成文法となっているようです。
いやいや、日本って駄目だなあと落ち込んではいけません。日本でもかつてはこんな法律がありました。
山川藪沢之利、公私共之。(山川薮沢の利、公私之を共にする)
天平宝字元年(757)に施行された『養老律令』の雑令
なんと、千年以上前に所有権だの利用権だのごちゃごちゃ言わないで、みんなで使いましょうね、という今から思えばたいへん立派な法律があったのです。日本にも。
でもこの養老律令ですが、当時の唐の律令のパクリだという説明もあります。古代日本人のオリジナルでなかったのは残念。将来の森林法にこの条文が新しい形で復活してほしいものです。
大畠記